朱鞠内湖Camp&Kayak

第3テントサイトの一等地
第3テントサイトの一等地

 天塩川の旅が終わったら、Ⅿさんは所用で厚真に帰った。私たち夫婦はゆっくりとキャンプをしようと朱鞠内湖に立ち寄ることにした。朱鞠内湖は昭和18年に雨滝川を堰き止めた人造湖で、完成当時は日本一広い面積だったそうだ。戦時下の過酷な労働で造られたダム湖とは思えない自然と静謐に今は満たされている。

 湖をカヤックで1周するつもりだったが、目の先の藤原島と陸地を結ぶ線より先は立ち入り禁止だと管理人から知らされる。「そこまででも2㎞はあるし、南風が吹いたら戻れなくなる。過去にもカヌーがひっくり返って死んだ人もいる」とのこと。天塩川を150㎞、秒速10数mの逆風を漕いできた我々でも、聞くだに恐ろしい話だから、従うしかない。「チェックアウトは午後3時、昼過ぎには湖畔のいいサイトが空くよ」というアドバイスを胸に、第2、第3とテントサイトを回ってみる。みんな車横付けでテントを張っている。湖畔近くで、昼食をしていると下のテントが撤収をはじめ「ここ、いいですよ」と声をかけてくれた。ありがたく、後を使わせてもらった。

 午後からカヤックを下ろし、許可範囲内を漕いで回った。盆栽島と陸地の間は地形図では湖水になっていたが、現状は陸つづきで通り抜けできない。隣の兎島もつながっていたから、年月を経て土砂が堆積したのだろう。風はなく、鏡のような湖面㋑岸辺の木立が映る。その中に立つ舎利幹をさらす枯れ木が孤老を思い起こさせ、いつまでこんなことがしていられるのだろうかと感傷を誘う。

 夕食を終え焚火台の小枝に火をつけた。ほろ酔いの目に炎が揺れ、朱鞠内湖の夜は静かに更けていく。晴れやかな日の下の立ち枯れより、闇の中で燃え尽きる火のような死のほうがよいか、ふとそんなことを思った。

 

 

湖面に浮かぶ孤木
湖面に浮かぶ孤木
夜は静かに
夜は静かに